■デジカメは珍しかった
当時とは1997年。カメラといえば普通の一眼レフのカメラ等をまだ意味していた。デジカメはまだ市場に出回り始めたばかり。
そのデジカメをオーストリアに持参、小さな液晶画面を見ながら写真を撮っていると、ファインダーに目を近づけて焦点を合わせるという風でも無く、ちょっと見慣れない仕方で写真を撮ろうとしていたからか、つまり
自分撮りをやっていたのだが、両腕を高く掲げて液晶画面を見ながら写真を撮ろうとしていた、そんな姿を珍しがって、
『何だ、それ? 新型のカメラか、見せてくれ!』
『触らしてくれ』
『どうやって撮るんだ?』等々、
色々と話題を提供する珍しいそうな新種のカメラであった。
わたしが持参したデジカメはメモリー容量が決まっていて、一枚につき26KB前後、90枚ほど撮れるというもの。電源としては1.5Xのアルカリ性電池4本を必要とするものでした。掌で握るようにして持ち運びが出来る携帯型のコンパクト・デジカメでした。
■オーストリアでは乾電池が高価すぎる!
当地オーストリアでデジカメを頻繁に使用するうちに、このデジカメは電池を物凄く食うということ、しかも当地オーストリアでは電池一本、つまりデジカメ補充用に4本セットを買うとしても、日本よりもべら棒に高価であるということを知った。
オーストリアでは電池が他のものと比較してみると何故か例外的に高い! ということで内心憤慨した覚えがあります。セットを買うにも一大決心が必要。
デジカメの利便さもさることながら、3、4回使うと電池のパワーはもうなくなってしまい、電池を食うだけでなく金食い虫になってしまっているのでした。
日本からデジカメを持ち込んで来ても当地で調達出来る乾電池が結構高価ということでは最新のデジカメを当地で使用するにも対費用効果(高価?)を考慮に入れるとこのまま使いこなして行くのもちょっと高くつきすぎると考え、デジカメの使用頻度も次第に減ってしまいました。
■デジカメのメモリー
当時、普通のカメラ愛好家たちの間でもそれなりのプロ的な視点から、カメラ本体内臓型メモリーよりも取り外しが利くスティック型メモリーの方が良い、とわたしに提案してきた人がいました。今ではデジカメのメモリーもスティック型になっているのを見ることが出来ますね。
■オーストリア国内、デジカメ市場
オーストリア国内のカメラ市場では普通のカメラを抜いて、デジカメが半分以上席捲するようになったという報道を昨年末だったか、聞きました。店頭に並べられているデジカメを見ると、殆ど日本の会社のブランド製ですね。
当時、デジカメと言えば、世界では日本が始めて発売し始めたのではなかったでしょうか。既に8年ほど経ちましたが、デジカメも改良に改良が加えられて、デジタル画像も普通のカメラの画像と遜色のない素晴らしい出来映えですね。そんな最新のデジカメが欲しい! でも、先立つ元手が手元にない。
■店頭に勢揃いする日本製製品
さて、店頭のウィンドウに並べられた日本製のデジカメをつらつらと眺めながら、どれもこれも素晴らしそうだ、でも、と思わざるを得ません。
『日本で買うのと、当地オーストリアで買うのとではどちらが得だろうか?』
つい購入価格について比較してしまいます。オーストリアに来る前、オーストリアの知り合いが新しい日本製カメラ用の広角レンズを購入したがっているということを知らされ、しかもオーストリアで同じものを買うよりも日本で買う方が何割か安いと聞いていたらしく、わたし宛に日本での価格を知らせてくれ、と欲しいカメラ部品の各社製品リストを送ってきたことがありました。
日本での所謂ディスカウントショップでの価格調査をして、オーストリアに情報提供をしました。香港の方がもっと安く買えるとか、私自身は聞いていましたが、とにかく日本からの価格リストをファックスで送った所、『確かに、日本の方が40%から60%も安い!』との感想を送り返してきました。オーストリアに来るときには『日本から序に買って持って来てくれ!』と相成った次第でした。
■日本製プリンター用インク
冒頭で日本製のプリンターも持参してきたことを書きましたが、使用しているうちに、手持ちのインク3,4箱分がなくなってくることを知り、同じ型のインクはリンツの街の日本製プリンターショップ専門店では幾らか、と価格調査に出掛けて行った。プリンターは日本から直に持ってきたものですから、どうも日本との繋がりを考えてしまうのです。
オーストリアでは高い!
さっそく、日本にいる知り合いに日本でのインクカートレッジ3個がセットになった一箱の価格調査をやってもらい、日本での販売価格を知らせて貰いました。当地の通貨に換算したところ、
日本の方が安い!
さっそく、50箱分を小さな段ボール箱にまとめて国際郵便で送って貰いました。オーストリア郵便局関税徴収部門の郵便配達人でしょうか、家にやってきた。段ボール箱は持って来なかった。
『単価が記された領収書を提出して下さい』
『全部、個人使用です!』
そう伝えても、信じない。取り付く島もない。オーストリアに既に届いていたプリンターインク50箱分はお預けになってしまった。仕方なし、注文領収書を取り寄せ、国際郵便局の部署に提出した所、50箱分に対して今度は『税金(輸入関税?)を払え』と言って来た。
『個人使用ですってば!』とわたし。
『販売するわけではないですよ!』とさらにわたし。
オーストリアの郵便局員は全然聞く耳を持たないようです。まとまった個数を取り寄せたので、個人使用とは認められなかったのかと勝手に反省していた。
結局、算出された税金を支払わされて、貨物を入手出来た。まあ、それでもオーストリア国内よりも安く仕入れた自分がちょっぴり誇らしかった。勿論、徹頭徹尾、個人使用しています。
そういえば、オーストリアにやって来た後、一ヶ月強も日数の掛かった船便で漸く届いた、日本からの引越し貨物全体(近所のスーパーで調達した、果物等が入ったダンボール、130個分、中身は殆ど書籍類でした)に対しても引越し貨物輸入関税(?)とやらを支払わされたことを思い出しました。
EU諸国は日本を第三国と見做しているのです。EU諸国内を移動する貨物には関税が掛からないとか。
■日本製品をオーストリアで使用するには
日本で使用していた電気製品、例えば、(4)卓上用蛍光灯 もありました。捨てるのは勿無いとオーストリアでも使用することに決め、引越し貨物の一つでした。
実は、日本とオーストリアでは電気の“質”が違う。日本では100Xの電圧、オーストリアでは230X前後の電圧を使用している。
日本から持参した日本製品、ノートPC、プリンター、蛍光灯、あっ、そうそう、(5)電気髭剃り器 も持って来ていましたが、これら全部は100X電圧用に製造されたものでした。
それらをオーストリアで使用するためにはオーストアの230Xの電圧を100X電圧に下げるモノが必要だということで、それも日本から持参した次第だった。日本から(6)携帯小型トランスフォーマ(トランス) を一緒に持参しました。このトランスは今以って大活躍をしています。重宝しています。
蛍光灯の方は蛍光灯自体の寿命だったのでしょうか、点灯しなくなってしまい、当地で代用品を購入しようと同じものを探しましたが、日本使用(仕様?)の蛍光灯はオーストリアにはないらしく、日本からの蛍光灯使用も「はい、それま〜でよ」でした。
■オーストリアの日本製品は高価過ぎるか?
さて、デジカメの話に戻ります。オーストリアの販売店が、多分日本よりも高い小売販売価格を付けて、日本製デジカメを売っているのを見るにつけ、
「日本だったら、同じものがもっと安く買えるのに、何だかオーストリアの販売店はボロ儲けをしているのではないのか!?」
価格札を研究(ちょっと大袈裟)しながら、ついわたしはそんな思いになるのです。
オーストリアでは何処の町に行っても見受けられるN店だったりH店だったり、やたら派手な広告を打っては、「大幅値下げ!」などと告知するが、所詮は事情を知らない消費者を見くびっているのではなかろうか、とそんな思いにもなるのです。
オーストリアでは郵便屋さんが郵便物と一緒に何故か、個人宅のポストに郵便屋さんがそうした広告までもポストに一緒に勝手に(勝手に、とは誰もそんな広告を欲しいとは伝えていませんから)配達して来るのですが、そんな広告を見ていると、つい、また消費者をワナに掛けようとしているな、などと勘ぐってしまうのです。
日本製品がそこら中に出回っているのを見るとわたしはどうも高く買わされるのではなかろうかとついつい構えてしまいます。本当に買う時には信頼が置けそうな日本製品に目が移ってしまいまするが。
同じものが日本であったら、幾らで売っているのか、とつい知りたくなり、知れば、その大差に当地で買う気力も失せてしまうというものです。
「高いわい! 高過ぎるわい!」
そう分かっていながら高い買い物をする自分がバカバカしい。もっと安く買えるのに、と。
何かと出費が嵩むオーストリアでの日常生活、倹約、倹約!
■それではちょっくら日本へと買出しに行って来ることにするか?
尤も日本へと頻繁に一時帰国することがないわたしですので、比較的日本の方が安いと思われる、必要な電気電子製品等を個人的に仕入れるという機会もありませんから、日本へ行く人に序に頼むか、それとも現地調達、つまり当地オーストリアでの調達、購入とならざるを得ないわけです。『個人使用ですよ』と伝えても、そんなことは聞きたくはないといったオーストリア郵便局員のようですから。
購入しようとすると、何度も言うように、どうも高く買わされてしまっているのではないのか、という印象が拭えないのです。
勿論、日本から電気電子製品等の物品をEU諸国(オーストリアを含む)に入れる(つまり輸入する)となると、輸入関税等を徴収されることになっているらしい。個人使用だから、と言っても受け付けてくれない場合があるらしい。とにかく、遥か日本から取り寄せるということで航空(または船舶)輸送費も掛かっている。
そうした関税、輸送費、また保険料等が、そして販売店の儲け分がオーストリア国内販売価格に全部上乗せされているので、高価な買い物になってしまうのでしょうね。
販売会社にしてみれば、わざわざオーストリアの消費者(オーストリアに住むこの日本人を含む)のために日本から日本の素晴らしい製品・商品等を仕入れて上げているのですよ。ご自分で仕入れることも出来るかもしれませんが、個人的に日本の販売店と交渉したり、価格交渉をしたり、また運送契約を結んだり、色々と日本から取り寄せるのに手間賃が掛かっているのですよ、お忘れなくネ、と言ってくるかもしれません。あっ、そうそう、言い忘れそうになりましたが、MwSt.というものも価格には含まれていることもお
忘れないようにネ、と付け足すかもしれません。
まあ、そうかもしれないが、「結局は儲けたいから仕入れているのでは?」とわたしからの本音を言いたくもなります。
今日、2004年、オーストリアの販売会社もせっせと日本製デジカメを仕入れて(日本から直接仕入れているのかは定かではありませんが)、いまでも市場でのシェアは普通のカメラを追い越して、デジカメが幅を利かせるまでになりました。市場ではたくさんの消費者がそれを買いたいから、そうなったのか、それとも市場では色々な販売店がそれを売りたいから、そうなったのか。